轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
ケチがつく、こう云う時には是非老人が一枚加わる必要があるのだから、君の禿頭の手前に対しても遁げ口上は許さないと、強引に持ちかけられましてな」
「あははははは、しかし常務さん」
と、房次郎が云った。
「そう仰っしゃる御自身も、御出席になってみて決して悪いお心持はなさらないでしょう」
「いやこの席上で『常務さん』はいけません。今夜は商売のことは忘れてゆっくりと御馳走になりたいもんですな」
幸子は娘の時分に、船場の蒔岡の店にもこう云う型に属する剽軽な禿頭の番頭がいたことを思い出した。大概の大商店が株式組織になった今日では、「番頭さん」が「常務さん」に昇格して羽織前掛の代りに背広を着、船場言葉の代りに標準語を操るようになったけれども、その肌合なり気持なりは、矢張会社の重役と云うよりお店の奉公人であって、昔はよくこう云う風な、腰の低い、口の軽い、主人の機嫌気褄を取ることや人を笑わせることの上手な番頭や手代が、何処の店にも一人や二人はいたものであるが、井谷が今夜この人物を加えたのも、座を白けさせないようにと云う心づかいでもあったことが察しられた。
五十嵐と房次郎との遣り取りをニヤニヤしながら聞いている瀬越は、貞之助や幸子達が大体写真で想像していたような人柄で、ただ写真よりは実物の方が若く、漸く三十七八位にしか見えなかった。