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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「僕読む」

と照彦様は進み出て、

「近来者赤し。春になって花が咲いたという意味さ」

とでたらめをいった。

「ちがうちがう」

「来じゃない」

「近朱者赤。近墨者黒」

と松村君が読んだ。

「そうだそうだ」

「こっちはなんだろう?」

「こっちはむずかしいぞ」

「水は方円の器に随い、人は善悪の友による」

と今度は正三君が読んだ。

「そのとおりそのとおり」

「これならメンタル・テストも及第だぜ」

「堀口とまじわるべからず」

「尾沢とまじわるべからず」

「堀口尾沢の不良分子とまじわるべからず」

「賛成賛成」

「ハッハハハハ」

と一同うち興じている折りから、

「エヘン」

という咳ばらいがきこえて、安斉先生がはいってきた。

「安斉先生です」

と正三君が紹介する。

「皆さん、今日はよくおいでくださいました」

と先生は満面にえみをたたえて一礼した。なるべく怖がらせない算段である。

「は!」

と松村君も高谷君も細井君もまっかになってしまった。

「さあ、どうぞおかけください」

と先生は自ら椅子によって相手をくつろがせようとする。

「さあ、かけたまえ」と照彦様もとりもつ。

「照彦様と内藤君が始終おせわになりましてありがとうございます」