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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「それは結構でございました。そうしてあなたはお受けをなさいましたの?」

「受けるも受けないもない。こっちは家来、むこうはお殿様だ。それに近いうち奥様がおまえのところへじきじき頼みにおいでになる」

「まあ! 私のところ?」

とお母さんは飛びあがらないばかりに驚いた。

そこへ正三君がおなかの時計でもうお昼時と承知してノコノコ帰ってきた。

「正三!」

「はい」

「そこへ坐れ」

「はい」

と正三君は坐ったが、しかられるのかと思ってビクビクしている。

「しかしその服装じゃ困るな。袴をはいてこい」

「はあ」

「袴だよ。お貞、袴を出してやれ」

とお父さんは自ら羽織袴でかしこまっている。夏休みに子供の袴はそう右から左へは見つからない。

お母さんはあっちこっちさがした末、正三君に袴をつけさせて、

「これでよろしゅうございますか?」

と不平そうな顔をした。

「よし。そこへ坐れ。正三や、おまえのおかげでお父さんは鼻が高い」

とお父さんは鼻の上へこぶしを二つ継ぎ足して天狗の真似をした。正三君はなんのことだやだらサッパリわからない。

「正三や、いまお父さんのいうことはお殿様の仰せつけだ。つつしんで承りなさい。