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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「家来でも平民でもかまわない。私の目から見ると数学のできるものが一番えらいんだ」

「まいったなあ」

と堀口生は両手で頭をかかえて嘆息した。ナカナカ愛嬌がある。皆はまた笑った。

「いいかね? わかったかね? この級には華族も士族も平民もいる。しかし一切平等だ。だれがえらいということはない。地理の先生から見れば地理のできるものが一番えらい。英語の先生から見れば英語のできるものが一番えらい。しかしおたがいにもっと眼界を広くして、もっと大きいところから見なければいけない。日本ぜんたいから見ると国家の役に立つ人間が一番えらい。世界ぜんたいから見ると人類同胞に貢献するものが一番えらい。いいかね? わかったかね?」

「わかりました」

「諸君は一つ奮発して人類同胞につくすようなえらい人間になる気はないか? どうだ? 横田君」

「あります」

「堀口君はどうだ」

「尾張名古屋です」

「なんだ? それは」

「大ありです」

「大ありならつまらないことをいって新入生をいじめちゃいけない。人間は皆同胞だ。ことに同級生は兄弟だ。仲よくしたまえ。ところでこの級のクラス会はいつやる?」

と先生は生徒を自在に操縦する。