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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「痛いですか?」

「切った時よりも後の方が痛い。僕も四、五年前にやりました」

と照正様は話し相手になってくれた。

しばらくするとお菊がまたやってきて、

「内藤さん、奥様がお呼びでございます」

「はあ」

と正三君は立っていった。応接間では照彦様の診察がおわったところだった。

「内藤さん、おついでですから、あなたも見ておいただきなさい」

と奥様がおっしゃった。正三君はいやもおうもない。二つ三つおじぎをして、藤岡さんの前の椅子にかけた。先生は額に反射鏡をつけて、

「ああん」

といった。

「ああん」

「これはかなり大きいですな」

ともう診察がすんでしまった。

「はあ」

「りっぱな手術ものです」

「ははあ」

と正三君は驚いた。

「しめしめ」

と照彦様が手をたたいた。

「それでは二人ご一緒にお願い申しあげましょう」

と奥様がおっしゃった。

「切るんですか? 僕も」

と内藤君はいまさらあわてはじめた。

「とってしまう方がいいですよ。そんなものをだいじにしておいても仕方ないでしょう」

と藤岡さんは平気なものだった。

「内藤さん、いずれお家へご相談申しあげます。先生はお上手ですから、痛くもなんともありませんのよ。