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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

正三君はたべないお相伴をさせられた。忠義のためには腹のへるぐらい仕方がない。一同は客間へ通された。先生夫婦が下へもおかないようにもてなす。手術を受けにきたよりもお客にきたようだった。

「若様の方は時おりお手あてを申しあげておりましたから、かなり小さくなっています。内藤君の方は難物ですよ。奥へひろがってくるみぐらいの大きさになっています」

と藤岡さんが用談にとりかかるまでにだいぶ時間がかかった。正三君は奥様からの目くばせをあいずに、

「先生」と芝居をやり始めた。

「なんですか?」

「大きいと痛いんですか?」

「なあに、ちょっとですよ」

「先生、僕、あとからにしていただきます」

「僕が後からです」

と照彦様がおっしゃった。

「骨の折れる方から先にやります」

と先生は笑っていた。

「僕からですか?」

「そうです」

「おやおや」

と正三君は頭をかいた。

ほかにも手術の約束があったが、こういう時にめぐりあわせたものはおきのどくだ。さっきから控え室で待たされている。藤岡先生も多少気になると見えて、まもなく、

「それではあちらへまいりましょうか」

と診察室へ案内した。照彦様と正三君は防水布の手術着をまとった。