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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「それは僕もそうだよ。あんな大きなものを切ったんだから傷ができているのさ」

「血が出ましたか?」

「出たとも」

「たくさん?」

「ダラダラ流れた。きみだって出たろう?」

「僕はなにがなんだかわからなかったんです」

「ジョキッといったろう?」

「ジョキンジョキンジョキンでした。あとは夢中です」

「きみは口ばかりだね。なっていない。藤岡先生は僕の方が強いといっていた」

と照彦様はいばりはじめた。

「それはおせじですよ。おやしきの人は僕と若様が同じならきっと若様をほめるんです」

「しかし僕は泣きそうになんかならなかったからね」

「人が見ていなければどんなほらでもふけます」

「ほらだ?」

「ええ」

と正三君は平気で答えた。

「内藤!」

「なんですか?」

「失敬だぞ」

と照彦様はれいの青すじを立てた。

「あとから切っておいばりになってもだめです」

「よし」

「今度僕は若様のお切りになるとき見ていてやります」

「見ていたまえ。泣きそうになったら、この首をやるよ」

「しかし僕は先に切ると、痛い最中ですから、若様のを見ていられません」

「弱虫!」

「今度は若様とご一緒に切りましょう」

「一緒には切れないよ。そんなむりをいってもだめだ」