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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「どうだい? 今のは」

「その調子、その調子」

なぞと尾沢生がごきげんをとっている。

昼からは習字だった。正三君は手がふるえて困った。こんなことでは喧嘩に勝てないと思って、じっと気をおちつけているところへ、前の席の生徒が、

「内藤君。おい、おい。内藤君」

と頭でささやいた。時間中後ろと話すときにはこの方法を用いる。

「なんだい?」

「僕のお清書だよ。下、下」

と机の下からなにか渡した。正三君は先生の様子をうかがいながら受けとってひろげて見た。

「一人と一人じゃない。堀口は尾沢に君をつかまえさせておいて、みけんをつく計略だ。用心したまえ」

と半紙いっぱいにお清書のように書いてある。これは青木という子で仲よしだからわざわざ知らせてくれたのだった。

「ありがとう。青木君」

と正三君はお礼をいった。

「さっき運動場できいていたんだよ」

「ふうん?」

「それだから尾沢がそばへきたとき用心したまえ。わかったかい?」

「わかった」

「二人でかかってくるんだから、一人じゃだめだよ」

「よしよし」

「それからね……」

「そこの二人、青木君と内藤君ですか? 前と後ろで話をしちゃいけませんね」

と先生が注意した。