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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

先生は教壇から下りてきて、うつむいている堀口生の肩へ手をかけた。

「きみ、出たまえ」

「はあ」

「立て」

「はあ」

「教壇の前へゆく」

「はあ」

と堀口生はそのとおり従った。

「きみも」

と先生は尾沢生をつかまえた。

「はあ」

と尾沢生も教壇の前へ出た。先生は生徒の顔を一々あらためながら教室をまわる。

「内藤君」

「はあ」

「出る」

「はあ」

と内藤君も立った。

「高谷君」

「はあ」

と高谷君はもうあるきだした。

「この四人は顔でわかる」

と先生がいった時、皆クスクス笑った。堀口生は頭がこぶだらけで額がはれあがっている。尾沢生は鼻がふくれている。正三君は口がとがっている。高谷君は左の目が充血してまわりが黒ずんでいる。

「見たまえ、諸君。これは皆仮装行列へ出る顔だ。教室へくる顔じゃない」

「…………」

「親不孝だよ。家へ帰って叱られたろう?」

「…………」

「しかしこのほかにも関係者があるはずです。覚えのあるものは申し出る」

「先生」と細井君と松村君が立ち上がった。

「もうないかね?」

「少しあります」

と照彦様が立ち上がった時、横田、篠崎、小川の三名も顔を見あわせて立ち上がった。

「よろしい。