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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「ええ」

「大したものね、お学友は」

「ただのご奉公じゃないのよ。客分ですわ」

と君子姉さんが主張する。

「正三や、お前なにかたべたいものはない?」

とお母さんがきいた。

「ありません」

「なにかあるでしょう? なんでも拵えてあげますよ」

「いいです」

「お貞や、それはお前がわからず屋だ」

とお父さんがいった。

「なぜでございますか?」

「正三は毎日おやしきで若様と同じご馳走をいただいているんだもの、なんの不足があるものか」

「あらまあ、仇討ち? オホホホホ」

とお母さんはかえって大喜びだった。

「正ちゃん、おやしきにはご馳走があるんでしょうね?」

と貴子さんもニコニコした。

「あります」

「どんなご馳走?」

「朝と昼は日本食です。晩は洋食です」

「晩はお殿様もご一緒ですってね?」

「ええ」

「いく皿ぐらい出て?」

「いやしいことをきくな」

と裕助兄さんが叱りつけた。

「いいじゃございませんか?」

「お前たちはおやしきというと目の色を変えるから滑稽だよ」

「ご恩になっているおやしきですもの。正ちゃん、いく皿?」

と貴子さんは強情だ。

「三皿か四皿です。僕はいつでもたべきれません」

「大したものね」