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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

お薬のおこぶ

それよりも君はボールをやるか?」

「やります」

「それじゃあっちへゆこう」

と照彦様の方からお相手を勤めてくれる。正三君は第一日ですっかり仲よしになった。

お薬のおこぶ

正三君は花岡伯爵家に住みこんでから四日になった。ご三男の照彦様はこの学友がお気に召してしばらくもはなさない。まだ学校が始まらないからいい遊び相手だ。あっちこっちへ引っぱり廻す。お陰で正三君は広いおやしきの勝手がほぼわかってきた。

「内藤君、お姉様のおへやへ遊びにいってみよう」

と照彦様がいいだした。

「さあ。おじゃまでしょう?」

と正三君は躊躇した。

「いや、昨日お姉様が遊びにおいでなさいとおっしゃった」

「それはそうですけれど」

「いこう。きみがこないと、僕はいけないんだ」

「なぜですか?」

「僕はおとといの晩、お姉様がこの間大姉様からいただいた大切のものをこわしたんだ。大理石の女さ。いじっていておとしたものだから、足が折れてしまった」

「それはそれは」

「その時からもうお部屋へは入っちゃいけないってことわられている。僕とはろくろく口もきかない」

「それじゃおわびのかなうまでいらっしゃらない方がいいでしょう」