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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

お部屋へもどったとき、照彦様は、

「内藤君、僕はもう去年の僕と違うつもりだよ」といった

「どういう意味ですか?」

「勉強する。ここできみと約束する」

「それはなによりありがたいです」と正三君はお辞儀をした。

「きみが帰ってから、僕は毎晩君の夢を見た」

「ははあ」

「たいてい僕が落第してきみが泣く夢だ」

「いやなお夢でございますな」

「きみ、これを見てくれたまえ」

と照彦様は新しい日記帳をひろげてつきつけた。

「拝見してもよろしいんでございますか?」

「うむ。僕の心が書いてある」

「それでは」と正三君は受け取った。

一月一日。晴。ゆうべまた夢を見た。やっぱり落第の夢だ。内藤君が泣いた。僕はおこって、

「おい、泣くな」

とおトンカチでなぐった。内藤君はすぐに死んでしまった。僕は泣きだして、内藤君にかじりついた。目がさめたら、それは枕だった。しかしなんともいえないいやな心持ちがした。

僕が落第すれば、内藤君が泣く。泣くばかりじゃない。死ぬかもしれない。大変だ。これは夢じゃない。

僕はこの年からほんとうに本気になって勉強する。

もうけっしてわがままをいわない。

これは内藤君がきたら約束しようと思う。