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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「…………」

「もうよろしい」

「はあ」

と尾沢生は肩を怒らせて、わざと足音をたてながら出てきた。

「困った子だな」

と橋本先生は考えこんだ。

照彦様は叱られなかったが、尾沢生は充分目的を達した。

「花岡はよわい。ボイボイ泣いた」

という評判が現場を見ていなかったものにまで伝わった。横田篠崎の両名は、

「花岡君、ちょっとちょっと」

「なんだい?」

「きみの度胸を拝見しちゃったよ」

「…………」

「もうしませんから、堪忍してください。あああああ」

とからかう。尾沢生にいたっては、照彦様のそばを通る時、

「華族華族カンカラカン。もうしませんのカンカラカン。堪忍してくれカンカラカン」

と歌う。

照彦様はくやしくて仕方がない。ある日の午後、尾沢生は増長して、

「こいつの度胸はカンカラカン」

といいながら、照彦様の耳を引っぱった。

「なにをする」

と照彦様はもう辛抱できなかった。いきなり一つ頬げたをくらわせた。雨降りで、皆ストーヴをとりまいていた。こういう日には得て事件がおこる。尾沢生があっけにとれれている中に、

「喧嘩口論すべからず」

と堀口生が割りこんだ。

「よせよせ」

と皆も止めた。