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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「なんですか?」

「私はこの上ともご奉公を申しあげる決心でございます」

「そこですよ」

「はあ?」

「内藤君、実はわしはこの間きみの兄さんに泣かされました」

「兄が伺いましたか?」

「おいでになりました。きみを返してもらいたいとおっしゃいます。理路整然、えらいものです。敬服いたしました」

「…………」

「正三には正三の天分がある。照彦様には照彦様の天分がおありです。どっちをどっちの犠牲にしても天下国家のためにならん」

「…………」

「わしは目が覚めたような心持ちがしました。ご道理です」

「…………」

「内藤君、これが昔なら、私たちはなにをおいても若様を守り立てなければなりません。しかし時世は一変しました。内藤正三は一番内藤正三らしい人間になるのが天下国家のためです。花岡照彦は一番花岡照彦らしい人間になるのが天下国家のためです。わしは考えが違っていました。しかしあやまちを改むるにやぶさかでない。内藤君、お学友の役目は今学期かぎりでといてさしあげますぞ」

「先生」

「なんですか?」

「僕は照彦様と仲よしですから、帰りたくないです」

「ご交際とご指導は相かわらずお願い申しあげたい。しかしこの上責任をおわせることはしのびません。