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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

なにかまだほかにあるだろう?」

と同僚はしきりに秘伝を知りたがる。

さて、内藤さんは翌朝八時半に番町のおやしきへ出頭した。家令の富田さんもちょうど出勤したところで、

「やあやあこれは早い、ご苦労ですな」

といって迎えてくれた。内藤さんは書面のお礼をのべてご無沙汰のおわびをしたのち、

「ときにお殿様のご用とおっしゃるのはなんでございましょうな?」

とうかがいを立てた。

「内藤君、きみはうらやましいですよ」

「どういうわけですか?」

「きみのところのお子さんたちの成績がお殿様のお耳にはいったのです」

「まさか。豚児ぞろいですもの」

「いいや。悪事千里を走る。善なんぞ門を出でざらんやです。そこで今回ご三男様のお相手にきみのところの末のお子さんをご所望なさるのです」

「ははあ。お相手と申しますと」

「お学友です。ご勉学は申すにおよばず、ご武術ご運動おなぐさみ、いちいちお相手をつとめます。大きな声では申されませんが、若様がたはみなさまどうもお姫様がたほどご成績がよろしくない。お殿様も奥様もいろいろとお考えになって、こんどはご三男様をごく平民的にご教育なさるおぼしめしで、○○中学校へお入れになりました」