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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「このたびは……」

と切り出した。

「富田から聞いてくれたかな?」

「はあ」

「承知してくれるかな?」

「はあ、ただ愚息に勤まりましょうかどうかと案じております」

「それは大丈夫だ。きみのところはみんなそろって抜群の成績だそうだな」

「どういたしまして」

「参考のためうけたまわりたいが、いったいどうしてそう成績がいいのだろう?」

「さあ」

「なにか思いあたることはないかな?」

「しいて申せば、私が酒を一てきもいただかないからでしょうか」

と内藤さんは同僚にもお殿様にも同じように答える。

「ふうむ。わしは酒を飲む。これは耳が痛いぞ」

「恐れ入ります」

「なあにかまわん。それからどうだね?」

「もう一つは……」

「なんだな?」

「私の家の金には私の汗の香いがしみています。それで子供が油断をしないで勉強するのだろうと存じます」

「ふうむ。汗?」

「はあ」

「汗を金にしましておくか」

「いいえ、かせいだばかりの金でございますから」

「うむ。額の汗か。労働か。皮肉だな。ハッハハハハ」

とお殿様は快く笑った後、

「万事富田と相談して、来月早々よこしてもらいたい」

「はあ」

「奥もきみに会いたがっている。ちょっと顔を見せてやってくれたまえ」