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おちばいき
落ち梅記
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,748 字 · 61 页
金之助はしかたなしに部屋へとおし、濡縁に面した障子を明けたうえ、火桶をすすめて坐った。
挨拶が済むとすぐ、由利江は持って来た包を解き、粗末な物で恥ずかしいけれども、公郷がこころざしだけ受けて頂きたい、そう云ってそこへ差出した。――畳紙をあけてみると、小袖ひと重ね、綿入の羽折、肌着、帯、足袋などがはいっていた。高価な物ではないが温たかそうな、心のこもった品である。そしてその品々からは、これを仕立て、由利江に託して届けさせた半三郎の気持が、その声を聞くようにありありと伝わってきた。
「本来なら貰ってはいけないのだが、古い友達の贈物という意味で頂きましょう、どうぞあなたから礼を云って下さい」
「公郷のこころざしをわかって頂けましょうか」
こう云って由利江の見上げる眼を、金之助はさりげなく受けながして訊いた。
「彼は元気ですか、よく勤めていますか」
「はい、元気に致しております、この頃はずっと酒も頂きませんし、――調べもので夜を明かすようなことがたびたびございますけれど、躯もすっかり丈夫になりましたようで……」
「それはよかった、あなたのお骨折りがようやく生きてきたわけですね」