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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

巴会御連中では私なども古顔の方で、「水道尻の太夫さん。」ということになっていた。

「ところで、水道尻の太夫さんにはなにを語って戴けますか?」と鶴屋の主人が云った。この人の息子の実さんは私の遊び友達である。私は黙ったままお師匠さんの顔を見た。お師匠さんも咄嗟に「さあ?」という顔をした。「ぼく、三千歳にしようかしら。」と云ったら、鶴屋の主人が「おっと、三千歳は先刻おれが約定済みだ。これだけは譲れない。」と云って、大人たちだけにわかる含み笑いをした。お師匠さんは、「そうね。清ちゃんはもうじきお染が上がるから、いっそお染にしましょうよ。休まずにいらっしゃい。」と云った。私はいそいでお染を上げて温習会に出すことになった。

家に帰ってから晩御飯のとき祖母から、「清、お前はお糸さんに食物屋ばかり教えたそうじゃないか。」とからかわれた。私はあそこは日新亭(洋食屋)、ここが大村(そば屋)、あそこが相亀(鰻屋)、ここは野村や(水菓子屋)という風にお糸さんに教えたのである。

「そのうちお糸さんに奢らせる魂胆なんだろ。日新亭のハヤシライスが食べたいってよく泣いたのは誰だっけね。