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おいついたゆめ

追いついた夢

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页

青空文庫

ような切ないような気持を感じたものであった。

源次が四年まえに死んでから、宇之吉は七造と一緒に植芳へかよった。おけいと四つ違いの、そのときまだ十七だった彼の腕では、母と五人の弟妹は養いきれず、妹の一人は子守りに出し、十二になる弟は日本橋石町の太物商へ奉公に遣ったが、それで母親の手内職を入れても食うのがやっとのことらしかった。

――可哀そうに今日も宇之は弁当を持って来なかったよ。

父親がそんなふうに云うのも珍しいことではなく、小銭や米などをそっと届けて遣るところなど、おけいの知っているだけでも五度や十度ではなかった。……それがおけいの身にまわって来たのである、酒も煙草も口にせず、なんの道楽もなく稼ぎとおしていた七造が、去年の冬のかかりに腸を病んで急死し、その日からすべてがおけいの肩にかかってきた。

母親はもう三年越し寝ついたきりだったが、自分で世話をするようになって、初めて病気の性質や薬の高価な意味がわかった。もとは単純な婦人科の疾患だったのをこじらせたのだそうで、激痛をともなったさしこみの発作が起り、それを鎮めるには一種の頓服しかなく、その薬は輸入品で、しかも表むきには禁制になっているため、手に入れることからして非常に困難だというのであった。