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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
すぐ医者にもみせ、骨接ぎにもかよわせて、いちおう治ったようにみえたのに、四十日ばかり経つと太腿の折れた部分が膿みだし、それがみるまに脱疽というものになって、死んでしまったのである。
――骨接ぎがへたくそだったんだよ。
近所の者は口ではそう云ったが、治療が不充分だったのだとは誰もが察していた。貧乏人は医者にも満足にはかかれない。病気になったらおしまいだということは、それぞれが自分でよく知っていることであった。……おけいは医者から母の病気と薬の性質を聞いて、そのときすぐに肚をきめた。医者の払いも溜り、借りも溜り、もう売る物も無くなっていた。
――宇之さんのためにもそうしたほうがいい。
そのままの状態では、見ている宇之吉も辛いだろう、こう思いきった。そして隣のおむらの知人で、そういう方面に関わりのある人に頼み、尾花屋という家へでかけたのであった。
「――阿母さん、早くよくなってね」
おけいは母親の寝顔に向って、口のなかでこう囁いた。
「――あたしはいなくなるけれど、もう薬代にも困らないし、美味い物も喰べられるわ、そのうちあの人に頼んで、できたら一緒に暮せるようにするし、そうでなくったって病気が治れば一緒になれるわ、……だからよく養生して早くよくなって頂戴ね、阿母さん」