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おいついたゆめ
追いついた夢
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1950(昭和25)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,427 字 · 41 页
「眼をあいてますぜ先生、やれやれ、涙と涎でぐしょぐしょだ」
「おまえさん動いちゃあいけないよ」
もう一人の顔が見えた。五十四五になる男で、頭を総髪に結い、ひどく痩せていた。もちろん医者に違いない、彼は和助の手首を取り、脈をみながら云った。
「卒中で倒れなすったんだ、全身の痺れるいちばん重いやつだから、動かないでじっとしていなくちゃいけない、むりするとそのまんまになりますよ、脅かしではないんだから、静かに寝てなくちゃいけませんよ」
「口もきけねえのかね、先生」
「そんな声でものを云っちゃあいけない、耳は聞えるんだから」
そして二人は向うへいったが、話す声はかなりはっきりと聞きとれた。
「すると治るみこみはねえのかね」
「いけないね、すぐ死ぬほうが病人のためなんだが、……そのほうがいいんだが、命は助かってもこのままで寝たっきり、まあ、……この診たてには間違いはないだろう」
「だってそんな、それじゃどうすればいいんだ」
「二両という金があるんだから、これも因縁だと思って世話をしてやるんだね、金が無くなっても引取り先がわからなかったら、まあそのときは村の御救い小屋へでも入れるさ」