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かみなりもんいほく
雷門以北
久保田 万太郎
「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月30日~7月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,839 字 · 44 页
観音堂附近(一)
が、いまわたしが昔ながら(わたしにとってはそうである)の「仲見世」を通って感じることは絵草紙屋のすくなくなったことである。(そのなかで最も大きかった清水屋……伊藤君のその店にしていまでは「中央公論」「改造」の二、三百ずつもさばく書店になってしまったのである)豆屋、紅梅焼屋の以前のように目につかなくなったことである。(数のうえでも豆屋は絵草紙屋とともにすくなくなった)「木村屋」を真似た名所焼の店のほう/″\に出来たことである。――そうして「武蔵屋」が衰え「伊藤勘」のさかえたことである……
由来そこは外のほう/″\の霊場がもつようなことさらな「名物」はもっていなかった。「煎豆」があり、「紅梅焼」があり「雷おこし」があったといっても、それらは直接「観音さま」に関連する何ものも持たなかった。それはただ「仲見世」あるいは「雷門」附近をえらんで店舗をもったにすぎなかった。――と、たま/\パン屋の「木村屋」あって「名所焼」を売りはじめた。――わたしの記憶にもしやあやまりがなければ、いまから十五、六年まえのことである……
観音堂附近(一)
それはただ在来の人形焼……で思い出したが、そのずっと以前、広小路の、「ちんや」