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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 页

青空文庫

と、おたみはそれをうけついで、「あのように申しますが、どうしたものでございましょう」

と、いうのを待たず、お綱はまた、万吉から頼まれた通りの言葉をつけ足した。

「それで、何でございます……万吉という者を、さだめし御不審にお思いなさりましょうが、決して悪い者ではなく、法月様から、大事な御用をいいつかって、一足先に、ここへまいったのだということでございます」

「えっ。あの法月様から?」

「はい、弦之丞様も近々のうちに、この江戸表へお越しなさいますそうな」

「まあ! ……」といって乳母のおたみ、お千絵の顔を振りかえると、かの女は、あまり意外なお綱の言葉を、よろこんでいいか、疑っていいか、茫然として聞いている。

「お綱さんとやら、それは真実でございますか」

「なんで、こんな憂き目にあってまで、お二人様へわざわざ嘘を言いにきましょう。さ、周馬の眼にかからぬうちに、ここから逃げるご思案をして下さいまし。本郷妻恋の、私の家までご案内して、どうなと後はおかくまい申します」

「お嬢様。いよいよ時節がまいりました」

「だけれど、たみや……」とお千絵は、躍りたつよろこびを、冷たい理性で打ちけしながら、