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おうごんかめん
黄金仮面
江戸川 乱歩
作者――江戸川乱歩氏曰く「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年8月号<br>黄金仮面「キング」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年9月~1931(昭和6)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 页
の事件を解決して間もなく、不経済なホテル住居をよして、ここのアパートへ移ったのだが、独身者の彼には、一家を構えるよりも、この方が気楽でもあり便利でもあった。借りているのは表に面した二階の二た部屋で、一方は七坪程の手広い客間兼書斎、一方は小ぢんまりした寝室になっている。
黄金仮面が鳴りをひそめているので、明智は少々退屈を感じていた。その日も、所在なさに、客間のテーブル兼用の大型デスクに頬杖をついて、プカプカ煙草を吹かしている所へ、突然ドアにノックの音が聞えて、見知らぬ老人が這入って来た。
老眼鏡に胡麻鹽髭、折目正しい羽織袴、どう見ても一時代前の人類だ。
老人は一礼すると、一封の紹介状に名刺を添えて、うやうやしく差出した。
名刺には「大鳥喜三郎」とあった。有名な大富豪の名前だ。まさかこの老人が大鳥氏ではあるまいと、ジロジロ眺めていると、老人は、
「私は大鳥家の執事を勤めて居りまする、尾形と申す者でござります」
と切口上で云った。
紹介状は実業界にいる友人の自筆で、万事よろしく頼む旨が記してあるばかりだ。
老人は長々と何か喋っていたが、凡て前口上に過ぎず、結局「黄金仮面」