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つばくろ

つばくろ

山本 周五郎

「講談倶楽部 秋の大増刊」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,987 字 · 44 页

青空文庫

彼も耳にした言葉ではあるが、現実に自分の子に当てて考えたことはなかった。しかし勝江の眼にはそれがわかったのだ、意識的であるか本能的であるか、ともかく大助がそんな幼ない年で、母のことに触れるのを避けようとするのはもう母には会えないと知っているために違いない。そう思うと高雄には大助を見ることができなかった、大助が独りで遊んでいる姿など眼につくと、胸がきりきり鳴るようで、思わず顔をそむけずにはいられなかった。そしていつも勝江に向って、

「大助をみてやって下さい、ほかの事はなにも構わないでいいのです、大助の世話だけして呉れればいいのですから、どうかなるべくあれの側を離れないで下さい」

少し諄いほどこう繰り返し頼んだ。本当はそんなに云う必要はなかったであろう、勝江はいつも大助に付ききりだった。おいちはしなかったが夜は抱いて寝るらしい、大助を背に乗せて馬のまねをするとか、庭で砂いたずらとか、鬼ごっこや隠れんぼうをするとか、自分が子供のように面白がって、さきだちになって遊ぶ。しばしば蘆谷川や亀丘山などへも伴れてゆくようすで、

「だいたんも、大きくなったや、およげゆね」