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ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 页
このあいだ他の四人は薪を割り炭を切るのだが、薪を割るのに木屑をとばせてはいけないし、炭も欠けを作ってはならない。
「――伽羅という香木があるだろう、一匁なん金という高価なものだ、薪も炭もその伽羅を挽き割るつもりでやらなくてはならぬ」
久之助はそう云い云いした。
それから朝食になるのだが、そして炊事は久之助がひとりでやるのだが、朝は麦ばかりの粥に味噌汁、昼が麦九割に玄米の飯と漬物、夜がまた麦粥に焼き味噌、漬物という具合だった。野菜は新しいのを豊富に使うが、魚や肉などは姿もみせなかった。
……食事が済むとたいていもう登城の刻である、勤めを果して下城する、そこでもういちど道場の拭き掃除をし、さて稽古になるのだが、これはあっさり一刻あまりで終り、こんどは昏れるまで畑作りをやる。道場の裏に五反歩ばかりの空地があるのを、蔬菜畑にしようというのだ、そしてじっさい後にはみごとな畑が出来たのである。
……夕食のあと一刻は習字をする、それも「一」という字だけ書くので、これまた相当に根の要るしごとだった。それから半刻、道場で稽古があり、もういちど水を浴びて寝るという次第であった。