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ゆだんたいてき

ゆだん大敵

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 页

青空文庫

五

――これはまなぶ意志がない、宗在はそう認めて、以来かれのことは殆んど忘れてしまったのであった。

柳生家にまる三年いて、久之助は長岡へ帰った。辞去するとき宗在の前に出て、

「……おかげさまでこの上なき修業を仕りました、篤くおん礼を申上げます」

と述べたが、宗在はそのときはじめて、かれがまなぶべきものをまなんだということを、その眼光のなかにみつけたのである、宗在はひそかに舌を巻いた。

五

帰藩してみると、稽古町にかれのための道場が出来ていた。

そして否も応もなくそこで師範の役に就いたが、かれは門人を五人と限ってお受けをした――五人とは少な過ぎるではないか、忠辰がそういうと、

「しんじつ道を伝えるためには、一時に多くをお預り申しても致し方がありません」

久之助はそう答えた。

「……また、入門した者はわたくしと共に道場に住み、そして勤役には道場から通って貰います、そして免許を取ったうえ出る者があれば、それに代って新しく入門させる、そういう規則を定めて頂きます」

かれの希望はそのまま容れられ、五人の門人もきまって、稽古町の道場は開かれた。

五人はまず揃いの道場着というものを渡された。