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ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 页
九
父は老臣の一人に招かれて留守だという、着替えをしていると横堀賢七がやって来て、
「……少々おはなし申したいことがございます」と云った。
久之助は頷いて、
「はいれ」といい、しずかに袴の紐を緊めて、対座した。
九
「今日は改めてお訊ね申すことがあります」
賢七がそう口を切った。
「……われわれはこの道場へ、柳生流の刀法を教授して頂くために入門いたしました、その点にわたくし共の考え違いがございましょうか」
「……さきを聞こう」
久之助はぽつんとそう云った。
「その心得で入門し、その心得で修業をしてまいりました、わたくしはかねて一刀流をまなび、高慢を申すようですが、自分では些か会得するところもございました、しかし柳生流をまなぶためにはそれを忘れ、つとめて謙虚にお教えを受けて来たと信じます」
「…………」
久之助は黙って次ぎを待った。
「ところで、さきごろ四人の頂いたゆるし書と申すものを拝見しますと、ゆだん大敵とやら、埓もない五文字が記してあるだけで、秘奥の伝授とは似もつかぬものでした、……下婢下僕のするような拭き掃除、洗濯をし針を持ち、畑作りまでして頂く免許が、『ゆだん大敵』