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ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 页
そんなことを云わずにと諍っているところへ、賢七が来たのである。……横堀と聞いて四人がはたと黙り、眼を見合せているところへずかずかと賢七がはいって来た。
「四人揃っていて好都合だ」
かれはそこへずっと坐りながら、まるで挑みかかるように云った。
「……些か思うところあって来た、いやおうは云わさぬ、四人とも免許のゆるし書を拝見させて貰うぞ」
四人はもういちど眼を見交わした。賢七の来たことが、結局は話を早く片付けることになった。気の早い田口求馬が、まるで五重塔のてっぺんから跳下りるような、悲壮な眼つきをして、
「よし、ではまず拙者のを披露しよう」
そう云い、用意して来たらしいゆるし書をとりだして、厳かにそこへ披げた。四人の眼はいっせいにその紙上に集った。そしてみごとな墨色で記してある五文字を読んだ。
……ゆだん大敵。
誰からともなくあっという叫びが漏れた。そして藤吉郎が立ってゆき、自分のゆるし書を持って来て、そこへ黙って披げた、「ゆだん大敵」である、甚右衛門が呟くように、
「……なるほど」と云った。
早川駿五郎はうーむと呻った。それなり茫然と黙ってしまった四人の顔を、どこか疑わしげな眼で順々に眺めまわしていた賢七は、大槻も早川も同じ物を貰ったに違いないと察し、いきなりわはははと笑いだした。