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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

と言って、妻にまで返金を強要するので、私もせん方なく、八方金策して一千五百円を集めたが、残り五百円はどうしても出来なかったので、友人望月氏に一時の融通を乞うた。

しかしただちに私は望月氏に頼んだことを後悔した。望月氏は逼迫していた。にもかかわらず氏はこの申し出を快諾して、ただちにその五百円を調達してくれたのである。お蔭で急場を救われたものの私は氏の都合が気になって後で訊くと、

『いや、あの金は日歩十五銭(年利五割五分)の高利貸の金ですよ。あなたには毎度融通してもらっているから、たとえ日歩三十銭払っても日頃の好意に報いたいと思ったのですよ』

望月氏は新聞配達業で金融にはずいぶん苦労していて、私もその窮状を見かね、氏には中村屋創業当時の恩義もあるので、およそ三ヶ年にわたって毎月末相談に応じて来たのであったが、私はいまこれを聞いて望月氏の誠意に涙をおぼえるとともに、よくよくの場合とはいえ、それほどまでにして金策をさせたかとじつに気の毒に堪えなかった。またこれによって、望月氏が常に日歩十五銭もの金を使って仕事していることを知り、ああ彼はこの高利のために生命を縮めるのではないかと歎息したが、果たして氏はついに病いに倒れた。