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いちしょうにんとして
一商人として
相馬 愛蔵
――所信と体験――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页
現にフォード会社の横浜における組立工場で、日本人の働きは、米国における同じ組立工場に比して、一割方も立ち勝ると聞いている。それが諸会社の使用人のみに逆の傾向を示すのは何故か。私はここに事業を行う者、またはそれに参加する者の大いに反省せねばならぬものを見るのである。
聞くところによれば米国の会社では、重役が他の会社の重役を兼ねることはきわめて少なく、専心一つの業に当り、自ら使用人の先に立って働くという。その他大学の総長さんなどでも、自ら第一線に立っていっさいの用事を仲介なしで裁決するということである。
これに反し日本の会社の重役なるものの中には、その資本力に任せて有利の事業と見れば八方に手を出し、一つの体で多くの会社の重役を兼ね、実際の働きにこれというものもなく、高級の自動車をあれからこれにと乗りまわして巨額の報酬を得ているものが多いのである。しかも使用人の俸給は著しく安いので彼らは内心不満なきを得ず、したがって責任を感ずることも薄く、仕事に対する態度も弛緩して人一人の持つ能力が発揮されていない。加うるに俸給が少ないため内職等に精力を消耗するので、これらが原因となって三倍もの人数を必要とすることになるのである。