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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

ある日その一高の学生さんが見えて、一人五銭ずつ八百人分の註文があった。ところがその後へ小使いが来て『今日寄宿舎に入る四十円の一割を小使部屋へ渡してもらいたい、八人で分ける』という。私は、学生さんから直接の註文であること、また学生さんのことなのですでに特別の勉強をしてあることを話し、小使いの要求に応じる筋はないと言って断った。

すると彼は意外な面持で『他の店ではどこでも一割出す習慣になっている、それをこの店だけが出さぬとあれば、容器などはどんな扱いをするか保証出来ないが』そこで私は『それも宜かろう、君らは学校から俸給を貰っていて学生の世話が出来ないというのであれば、君らの希望通り、明日から学生の世話をしなくともよいように取り計って上げよう』早速学校の当局に出向いていまの言葉をそのままに話して来ようと強硬な態度を見せたところ、その小使いは驚いて逃げて帰った。あらたまって飛んで来たのが小使頭で、彼は前の小使いの失言を詫び入り、どうぞ内聞に願いたいと頼むのであった。私も気の毒になって、それではと菓子一袋ずつを与えて帰した。昔の一高の小使いなどというものは、出入り商人に対してこの通り威張ってコンミッションを取ったもので、今日から見ればまさに隔世の感がある。