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いちしょうにんとして
一商人として
相馬 愛蔵
――所信と体験――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页
ために、昭和十二年度の新店員にはつい一回も話して上げることが出来ないで今日に至り、まことに申し訳ないことと思っています。この後にもまたこんなことがあるといけないと思い、主人のこの本が出来るにつけ、主婦としてあなた方に話して上げることを、ここに書き添えることに致しました。
いったい店の歴史などと改っていうと、たいそう大袈裟に聞えます。けれども国に歴史あり家に父母祖父母の思い出があるように、どんなに微々たる一商店にもそれ相当の、後々へ語り継ぐべき苦心の物語があるものです。
あなた方は学校で歴史を学び、一国の興亡、一族の栄枯盛衰、戦いの勝敗に、みなみなきっと多くの興味を感じたでしょう。その同じ興味をあなた方はやがて商業の世界、商店の栄枯の中に見出すようになるでしょう。平家にあらざれば人にあらずと全盛を誇った平家はどうしてあのような悲惨な最後を遂げましたか、それと同じ疑問がじきに商売の方にも見えて来ます。ある店は千客万来の大繁昌で、全店員一生懸命の働きをしても間に合わぬというのに、ある店では堂々たる店舗を構えながら門前雀羅を張るが如しという不景気、また一族相率いていわゆる上り身代となって富み栄えると見れば、次には眷属ことごとく没落の一途を辿り四方に離散する。