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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

万事この調子で、いろいろ心配りが多くて行きとどかぬ勝ちの私を扶けて、それはよくしてくれたものでした。

このおはつさんに一つ不思議なことがありました。それは自分だけいつもおじやかお粥を食べていることで、私は気にかかり、ある時何故かとおはつさんに訊ねてみました。すると傍から職人が『ナーニおかみさん、御心配には及びませんよ。おはつさんは釜や飯櫃にくっついた御飯粒や種子飯(パンの発酵素をつくる)の残りを集めて煮てたべているのですよ』と代って返答したので初めて謎が解け、年若とはいえあまりに認識の足らなかった自分を恥しく思うとともに、おはつさんの心がけにはほとほと感心いたしました。

仙台の生家にいる頃、お勝手の手伝いをさせられる時に私はたびたび母からお竹如来のはなしを聞かされ、物を粗末にしてはならないこと、水使いのあらい者は人使いもあらいものだから、井戸水でも一滴だって無駄にこぼしてはならないと言われたことを思い起し、我らのおはつさんもおはつ如来として祀ってよい人だと思いました。

お竹如来のことはその後も忘れませんでしたが、芝増上寺の末寺飯倉赤羽橋の心光院に今なお祀られていることを最近に知り、それがまた故渡辺海旭先生と深い因縁のあることも分って、いまさらのように仏縁の尊さをしみじみと思うのであります。