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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

それゆえこういう事態を惹き起したのではないか。これは悪かったと、私はまず自分たちを反省せずにはいられなかったのです。

私は少しぐらいの損をしても早く取り消すことを主張しました。が主人は寛大に見て、せっかく皆がよかれと思ってしたことだからと言って、とにかく開店することにしました。私も不本意ながらしぶしぶ主人の言に従わざるを得なかったのです。大正十五年十二月でした。

翌年の正月早々には文雄が南米に立つことになっていました。で、とりあえずそれまでの一月を最後の孝養として文雄がそちらの店番をすることになり、開店はたしか十二月の初め、いよいよ蓋をあけて見ると果たして店員たちの期待ははずれました。彼らはこの新しい支店で毎日三百円の売上げを予想しました。当時の中村屋としてはすでに相当繁昌していましたから、少し拍車をかければ現在のままでも三百円の増加を見ることは不可能ではなかったのですが、何を苦しんで四千円を投じて支店を設ける必要があったのか、あまりに認識の欠けているのを憫れまずにはいられない。

とにかく開業当日に百円の売上げがありましたが、翌日は八十円に減じ、六十円になり、とうとう三十円台にまで落ちてしまった。