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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

になったのです。その後仕事が大きくなって千葉地方の広い所に鶏舎を移し、ますます新しい研究へと目夜精進されています。両親の愛と物質的にも恵まれて世の辛酸を知らず成長したいわゆるお坊ちゃまは、たいてい肉体的勤労を厭い、白き手を誇る傾きがある中に、氏が現代の科学的立場に立ち、自ら土に親しんで実生活に邁進されるのはまことに頼もしい限りです。

元来軍鶏は喧嘩鶏といって、絶えず仲間同志蹴合いをする特異性を持っていますが、喧嘩に勝った鶏は揚々として首を高くもたげて四辺を睥睨し、あたかも凱旋将軍の如くでますます飼主に重んぜられる。これに反し敗れた鶏は意気消沈して、一時に肉が落ち味も劣ってしまう。それゆえ鶏が闘って敗れればそれはもう中村屋の使用鶏にはなれないのです。たちまち二位三位に落とされてはねのけられ、もう一等級には入れられないで、他へ売られて行くのです。

だから飼主は鶏に喧嘩をさせないように、絶えず注意しなければならない。大風が吹いて樹木がざわざわする夜などは飼主の心配は一通りでない。神経質で気のあらい軍鶏は荒天に刺激されて鶏舎の中で大騒ぎをはじめる。そして鶏は肉痩せ、大風の後には相当の損害を覚悟せねばならないのです。