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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

という新聞広告が目についた。今の銀座松屋がまだ神田今川橋時代のことであった。二人の若い男女が急ぎ足で松屋に駆けつける絵入りの広告で、今なら百貨店の特価売出しは毎度のことだが、当時としては珍しく、思い切った試みをするものだと誰しもかなり興味を惹かれた。私もこの広告に惹きつけられてわざわざ松屋に出かけて行った。

割引場に入って見ると押すな押すなの大盛況で、その二室とも身動きもならぬ有様だ。私はなるほどこんなものかと、すなわち割引というものに対する大衆の心理に驚き、混雑に押されて外に出たが、他の各室の至って閑散なことはまた私に別の驚きをさせた。

帰途電車の中でも、私はバーゲンセールについて、色々と考えさせられた。

『私は今日の広告を見て行ったから三割引で買物が出来たが、前日松屋で買物をした客はどんな気持がするだろう、同じ品を今日の客より三割高く買わされたという感じをしないものだろうか。そう思ったらずいぶん腹も立つことだろう』

『バーゲンデーは一週間限りだが、八日目に行った客はどんた気持がするだろう』

『店の方から考えても、日を限っての廉売をして一時的に多数の客を吸収することは、能率的に見てもまた経済的にも決して策を得たものではない。