轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

十五日までに百俵の餅は全部予約済みとなり、約六百軒のお得意を得ることが出来た。そして畑中氏の説に違わず、この新兵衛餅は探しても他では得られぬ最上等の餅であったから、この評判は延いて日本菓子の紹介となり、一ヶ年後にはパンよりも日本菓子の方が成績を上げて、中村屋の総売上げは急に倍加し、完全に販売能率の平均を見ることが出来たのであった。

しかしながら新兵衛餅にも不作の年はあった。新兵衛餅を産する所は、埼玉県越ヶ谷、新兵衛新田と称し、昔は沼地であったものを埋め立てて田としたのであるから、傍を流れる綾瀬川が増水するとたちまち浸水し、せっかくの最上餅も、三流以下の品に落ちてしまう。

それゆえ、この土地に限って出水の季節に先立ち、一ヶ月も早く刈り入れるのであるが、それでも水害を蒙ることがある。私は初めのうちそれを知らなかったから、浸水した餅を最上餅として売り出し、後で品質の劣ったことが判ってそれを全部引き取り、改めて他の餅を納めてお客様にお詫びしたことがある。

それ以来私は米の成熟期と収穫期と、二度は必ず産地に出向き、実地を視察することにしている。

ある年、関東地方は雨天続きで、糯米の品質が劣って、いかに新兵衛でも例年通りの最上の餅とはいえまいという見込であった。