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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

道理には違いないそうもなければならぬことじゃが、これを譲っていつまた五重塔の建つという的のあるではなし、一生とてもこの十兵衛は世に出ることのならぬ身か、ああ情ない恨めしい、天道様が恨めしい、尊い上人様のお慈悲は充分わかっていて露ばかりもありがとうなくは思わぬが、ああどうにもこうにもならぬことじゃ、相手は恩のある源太親方、それに恨みの向けようもなし、どうしてもこうしても温順に此方の身を退くよりほかに思案も何もないか、ああないか、というて今さら残念な、なまじこのようなことおもいたたずに、のっそりだけで済ましていたらばこのように残念な苦悩もすまいものを、分際忘れた我が悪かった、ああ我が悪い、我が悪い、けれども、ええ、けれども、ええ、思うまい思うまい、十兵衛がのっそりで浮世の怜悧な人たちの物笑いになってしまえばそれで済むのじゃ、連れ添う女房にまでも内々活用の利かぬ夫じゃと喞たれながら、夢のように生きて夢のように死んでしまえばそれで済むこと、あきらめて見れば情ない、つくづく世間がつまらない、あんまり世間が酷過ぎる、と思うのもやっぱり愚痴か、愚痴か知らねど情な過ぎるが、言わず語らず諭された