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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

うちは無益な苦労を妾はします、お上人様は何と仰せか、またのっそりめはどうなったか、そう真面目顔でむっつりとして居られては心配で心配でなりませぬ、と云われて源太は高笑い。案じてもらうことはない、お慈悲の深い上人様はどの道我を好漢にして下さるのよ、ハハハ、なあお吉、弟を可愛がればいい兄きではないか、腹の饑ったものには自分が少しは辛くても飯を分けてやらねばならぬ場合もある、他の怖いことは一厘ないが強いばかりが男児ではないなあ、ハハハ、じっと堪忍して無理に弱くなるのも男児だ、ああ立派な男児だ、五重塔は名誉の工事、ただ我一人でものの見事に千年壊れぬ名物を万人の眼に残したいが、他の手も知恵も寸分交ぜず川越の源太が手腕だけで遺したいが、ああ癇癪を堪忍するのが、ええ、男児だ、男児だ、なるほどいい男児だ、上人様に虚言はない、せっかく望みをかけた工事を半分他にくれるのはつくづく忌々しけれど、ああ、辛いが、ええ兄きだ、ハハハ、お吉、我はのっそりに半口やって二人で塔を建てようとおもうわ、立派な弱い男児か、賞めてくれ賞めてくれ、汝にでも賞めてもらわなくてはあまり張合いのない話しだ、ハハハと嬉しそうな顔もせで意味のない