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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

ではありませぬが、真実に内の親方は茶袋よりもありがたいとおもっています、いつぞやの凌雲院の仕事の時も鉄や慶を対うにしてつまらぬことから喧嘩を初め、鉄が肩先へ大怪我をさしたその後で鉄が親から泣き込まれ、ああ悪かった気の毒なことをしたと後悔してもこっちも貧的、どうしてやるにもやりようなく、困りきって逃亡とまで思ったところを、黙って親方から療治手当もしてやって下された上、かけら半分叱言らしいことを私に云われず、ただ物和しく、清や汝喧嘩は時のはずみで仕方はないが気の毒とおもったら謝罪っておけ、鉄が親の気持もよかろし汝の寝覚めもよいというものだと心づけて下すったその時は、ああどうしてこんなに仁慈深かろとありがたくてありがたくて私は泣きました、鉄に謝罪るわけはないが親方の一言に堪忍して私も謝罪りに行きましたが、それから異なものでいつとなく鉄とは仲好しになり、今ではどっちにでもひょっとしたことのあれば骨を拾ってやろうかもらおうかというぐらいの交際になったも皆親方のお蔭、それに引き変え茶袋なんぞはむやみに叱言を云うばかりで、やれ喧嘩をするな遊興をするなとくだらぬ