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ごじゅうのとう

五重塔

幸田 露伴

「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页

青空文庫

酒盃とって源太は擬し、沈黙で居る十兵衛に対い、十兵衛、先刻に富松をわざわざ遣ってこんなところに来てもらったは、何でもない、実は仲直りしてもらいたくてだ、どうか汝とわっさり飲んで互いの胸を和熟させ、過日の夜の我が云うたあの云い過ぎも忘れてもらいたいとおもうからのこと、聞いてくれこういうわけだ、過日の夜は実は我もあまり汝をわからぬ奴と一途に思って腹も立った、恥かしいが肝癪も起し業も沸し汝の頭を打砕いてやりたいほどにまでも思うたが、しかし幸福に源太の頭が悪玉にばかりは乗っ取られず、清吉めが家へ来て酔った揚句に云いちらした無茶苦茶を、ああ了見の小い奴はつまらぬことを理屈らしく恥かしくもなく云うものだと、聞いているさえおかしくて堪らなさにふとそう思ったその途端、その夜汝の家で陳べ立って来た我の云い草に気がついて見れば清吉が言葉と似たり寄ったり、ええ間違った一時の腹立ちに捲き込まれたか残念、源太男が廃る、意地が立たぬ、上人の蔑視も恐ろしい、十兵衛が何もかも捨てて辞退するものを斜に取って逆意地たてれば大間違い、とは思ってもあまり汝のわからな過ぎるが腹立たしく、四方八方どこからどこまで考えて、ここを推せばそこに襞が出る、あすこを立てればここに無理があると、まあ我の知恵分別あり