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にんげんせいかつのむじゅん

人間生活の矛盾

丘 浅次郎

「中央公論」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,798 字 · 36 页

青空文庫

第二には「生物進化論を葬る」であるが、生物の進化はすでにあった事実であるから、これを葬って、なかったものとすることは誰にもできぬ。これを葬り得ると考えるのは、ただ無智な者だけである。「ダーウィンの自然淘汰説を葬る」ならば演題としては正しく、かつ実際に、そのとおりの意見を持っている学者も幾人かあろう。

自然淘汰の大要は今日たいがいの人が知っているからくわしく説明する必要はないが、その骨子だけをかいつまんでいうと、この説は、遺伝と変異と淘汰との三つの事実を認めて、その上に立つものである。遺伝とは子が親に似ることで、これは目前の事実である。変異とは同じ親から生れた兄弟でもかならず少しずつ違うことで、これまた目前の事実である。残るところは淘汰だけであるが、これは生物の蕃殖する率と、実際に生き残る子供の数とを比べ、生存には競争が伴い、優った者が勝ち劣った者が敗けて、多数の中から少数のもっとも優った者だけが生き残ると推断した結論である。さて、これだけの事実があるとすれば、これに基づいて生物の進化し来った道筋を容易く説明することができる。例えば、ここに何疋かの兎がいて、狼に追われたとすると、足の遅いものは皆喰い殺されて、もっとも足の速いものだけが生き残る。