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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
本当に今のは新一の姿であったのか。それとも山中の逢う魔が時の幻に過ぎなかったのか。京子は判断に迷った。そして何とも知れぬ恐怖に襲われ、あとをも見ずに別荘に逃げ帰ったが、帰って探して見ると、新一はどこにもいる様子がなかった。やっぱり幻ではない、新一は何者かを追って山の中へ入って行ったのだ。そう判断すると京子は直ちに兄南博士にこの事を告げ、兄と共に望月少佐の前に出て、委細を報告したのである。
その夜から翌日に亙って附近の山中、温泉村一帯の探索が行われた。望月少佐の部下の憲兵達は勿論、設計班の学者達までも、手分けをして出来る限り探し廻ったが、新一は神隠しにでも会ったように、全く行方が分らなかった。新一が自ら失踪する筈はない。何物かに拐されたとしか考えられぬが、女子供ではあるまいし、大の男がそんなに易々と拐されるのは、ちょっと想像も出来ない不思議な出来事であった。
この異常事に引続いて、新一が行方不明となった次の日の真夜中に、更らに一層驚くべき事件が起った。
五十嵐老博士の病室は、その夜は殊更ら厳重に警戒されていた。開け放った扉の次の間には望月少佐が眠り、もう一つの出入口の外の廊下には、一人の憲兵が寝ずの番を勤めていた。