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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
耳をすますと、声はその下から響いて来るようだ。丸太の蓋を取りのけると、その下に井戸のような大きな穴が、ポッカリと黒い口を開いていた。
「オイ、そこに誰かいるのか」
怒鳴って見ると、それに答えるように唸り声が高くなった。底は深くて暗いのでよくも見えぬけれど、どうやらその底に人間が倒れている様子だ。
穴の中には直立の梯子が懸っている。少佐はそれを伝って一丈ほどの穴の底へ降り立った。上の入口よりも底は広くなっていて、一間四方ほどもある。四方は土の崩れぬよう頑丈な石垣になっている。
そこに倒れていたのは、想像のごとく五十嵐新一青年であった。グルグル巻きに細引で縛られ、手拭の猿轡をはめられて、物もいえず、身動きもできぬ哀れな有様で転がっていた。
少佐は手早く猿轡をとり、細引を解いてやった。だが、新一は起き上る気力もない。
「望月さん有難う。僕はかならずあなたが助けに来て下さると信じていました。有難う。しかし、父は、父は本当に亡くなったのですか」
その質問には望月少佐の方で一驚を喫した。
「君はどうしてそれを知っているのです」
「僕をここへとじこめた奴がそういいました。