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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

大統領は、この苦言に耳を貸して笑いをやめた。そして、腕組みをした一方の手で顎を撫で廻した。

「なるほど、その点はグルウ君や君のいう通りだ。わたしは国内の士気を盛んにすることばかり考えていた。ジャップ・キッドの見物人の中には、やがて前線に征く軍人が多数まじっているということを忘れていた。君のいうようにジャップ・キッド劇の禁止令を出さなくてはならぬかも知れん。だが、それはいずれゆっくり考えるとして、さし当って今夜の問題だ。君の報告を聞くことにしよう」

大統領は椅子の中で居住いを直して、オブライエンの鋼鉄のように痩せた顔を見上げた。

「東京のF3号からの通信です」

オブライエンは猫背になって、大統領に顔を近づけ、声を低くした。

「それは聞いている。通信の内容は」

「例の高速度飛行機の設計ノートを盗み出して焼き捨てたのです」

「こちらへ送る手だてはなかったのだね」

「そうです。焼き捨てる外に方法がなかったのです。それから……」

「ウン、それから」

「発明者を天国へ送ったと報じて来ました」

「民間の老科学者だったね」

「そうです。一度刺殺しようとして失敗し、二度目には毒薬で成功したといっております。