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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
三人とも全く無言であった。曲者も別に抵抗する様子はなかった。揺れながら洞窟の地上を照らす懐中電燈の円光、そのうしろから黙々として進む三個の黒影。
ところが、そうして十歩も進んだかと思う時、突如として、又もや意外な異変が起った。両方から引き立てている手の中で、穴居人の身体が、俄かに力を失い、海鼠のようにクナクナとくずおれて行ったのである。引き起しても引き起しても、立ち上る力も歩く力もなく、相手は最早人間ではなく、非常に重い一個の物体と化したかと感じられた。
「オイ、どうしたんだ」
懐中電燈が穴居人の醜い顔を照らし出した。口はだらしなく開いたままであった。両眼はうつろになって空を見つめ、微動もしなかった。その顔は死人の顔であった。
「死んでいる」
「自殺したのじゃありませんか」
二人は重い死体を抱えて、ようやくにして待避壕の入口に達した。そこには技師長と京子と数名の守衛や工員が群がっていた。
「どうしたんですか、その男は」遠藤技師長が驚きの叫び声を立てて近づいて来た。
少佐と新一青年とは、曲者をそこに横たえて、脉と呼吸を調べたが、男はまったく息絶えていることが分った。