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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
同病院の建物の一部は、五百キロ爆弾の直撃を受けて跡方もなく破壊され、数十名の患者と看護婦は重傷を負い、十数名は即死し、残余の患者にたいしては無残なる心理的衝撃をあたえて、病院全体を名状すべからざる混乱におとしいれたのである。
丁度その時、この病院には故五十嵐東三博士夫人が入院していた。夫人は持病の腎臓疾患が悪化して、二週間前からこの病院の一室に呻吟していた。一人息子の新一が絶えずそこを見舞っていたのはいうまでもないが、南京子も愛人の母病篤しと聞き、大和航空機製作所女工員の勤めをしばらく休んで、この病院に泊り込み、博士未亡人の看病に当っていたのである。
×大学病院に爆弾が投下されたのは午前四時ごろであった。同病院の屋上には、巨大な赤十字が二つまでペンキで記してあった。病院内の者は誰もこの建物が爆撃目標となろうとは考えていなかった。しかし万一の場合をおもんぱかって患者の大部分は地下室に移され、警戒警報によって駈けつけた当番の医員たちは、附近の罹災者救護に当るため万端の準備を完了していた。そこへ、突如として百雷一時に落つるがごとき大音響と激震をともなって、二百五十キロ爆弾が落下したのである。