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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

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会議室のドッシリと重い楢のドアを開き、それぞれ常にない緊張の面持で室内に消えた人々のうち、半数以上は顔見知りの高官であった。陸軍大臣、参謀次長、航空技術本部長、兵器行政本部長、悉くが最高の長官ばかりである。

外に背広服の人が三人、その内の一人は、同僚の少年給仕が失礼にもクスクスと忍び笑いを漏らしたほど風采の上がらぬ老紳士であった。五尺に足らぬ小男の上に、少し腰が曲っているので、まるで一寸法師のような感じがした。折目の全く見えぬ羊羹色の黒の背広、行儀悪く背広の襟をはみ出している鼠色のカラー、今にもほどけ落ちそうなネクタイ、その上に棕櫚箒のように伸び放題にした胡麻鹽頭の痩せた黒い顔が乗っている。何週間も剃ったことがないのであろう、白髪まじりの赤茶けた鬚が、頬と頭とを蔽い隠し、あまり恰好のよくない大きな鼻の上に、小さな玉の古風な眼鏡が、今にもズリ落ちそうにひっかかっている。どう見ても陸軍大臣と同席する風采ではない。

密閉された大扉の中で、会議は三時間以上もつづいた。その間、省内の人々は会議室前の廊下に近づくことすら禁じられていた。大臣の秘書官さえも例外ではなかった。