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いだいなるゆめ
偉大なる夢
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页
「そうとしか考えられません。この建物の持主はお金持でしょうが、今ここを占領しているのは、金に縁の遠い学者ばかりです。その学者が持ち込んだ古金庫の中に、これほどの冒険に値する大金が入っていよう筈はありません。それに遣り口が普通の盗賊とは違っています。曲者はお父さんの設計事業を妨害しようとしているのです。発明を盗もうとしているのです」
「だが、どうしてそれが分る。この発明のことを知っている者は、日本中に数人しかいない。しかもれっきとした高官ばかりだ。スパイの嗅ぎつける隙は少しもなかった筈だ」
「だから、猶更ら恐ろしいのです。奴のやり口には、何だか途方もない、桁はずれなところがあります。決して尋常の敵ではありません」
新一は何者かに脅えるような目つきをして、真剣な調子で云うのであった。で、期せずしてそこに盗難対策、或はスパイ対策の会議が開かれた。三人の学者と二人の技師とは、或は長椅子に腰かけ、或は立ちはだかったまま、一時間余りもこの問題について語り合った。
航空技術本部の木本博士は、余り口を利かなかったが、新一のスパイ説に同意していることは明かであった。若い助教授の南博士は雄弁に説を立てた。